点・線・面~II

興味関心のあることがらについて備忘録的に記して行きます。

3Dプリンターのありがたみ

昨年の事ではありますが、3Dプリンタを買いました。
AFINIA H+1 という機械です。
個人用としてはちょいと値が張りますが、仕事でも使う事だし、との言い訳をしつつポチりました。

こちらを買うときの比較候補として、INFINITY X1というのもありましたが、こちらがオープンフレームであったところが気になり、AFINIA H+1を選びました。


この時の選択は間違っていなかったようです。
主に使っている材料はABSなのですが、出力寸法が水平方向に大きくなると反りが出やすいです。いろいろと調べていると、出力後の樹脂に樹脂の温度が室温に近づくにつれて縮みの影響が大きくでるとの事でした。
以前に経営していた会社で導入した工業グレードの3Dプリンタは、出力エリアが2重壁で覆われ、ヒーターも仕込まれていて、そのエリアの温度が90℃となったところで出力を始めるものでした。こんな凝った仕掛けを作るのですから、やっぱり温度の管理は大事そうです。


AFINIA H+1は出力プレートにヒーターが入って、扉もありいくらかは温度の維持が出来るのですが、そのまま使っていると、1辺当たり150mm位の大きさがあるものを出力すると反りが出ます。そこで、そこで工業用3Dプリンタに少しでも近づけるべく、少しでも効きそうなところに断熱材を貼り、出力時には装置全体をプチプチで覆うことにしました。
内部はこんな感じです。

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このような状態にして、その上で出力を開始する前にプレートのプレヒートを1時間かけて出力エリア内の温度を高めておくと、出力物の反りはかなり改善しました。大体欲しいレベルの寸法精度でモノが作れます。

仕事絡みでいろいろな部品を作っていて、こんな感じで仕上がります。

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これで直径Φ30、高さ50位の部品ですが、このようなものを加工屋さんにお願いして造ってもらうと3万円は下らないと思うので、気楽に造れちゃうのメリット大です。


この機械を選んだもう一つの理由が、使える材料の種類です。
ABSやPLAの他にTPUという弾性材料が使えます。ゴムみたいな材料です。

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材料の特性上、あまり細かい造形は出来ませんが、ABSなどの樹脂では実現出来ない大変形が必要な部品でシンプルな形のものであれば、十分に実用になります。ただ、この材料をまともに出力させるには、ヘッドとプレートのギャップや、ヘッドの送り速度など、美味しいパラメータを見つけるまでは結構苦労しました。
基本的には、ヘッドとプレートのギャップは可能な限り大きく、ヘッドの送り速度は我慢できるところまで遅く、と行ったところでしょうか。

個人使いの3Dプリンタを買ってみて気がついたメリットは、設計の完成度を上げていく時間がめっちゃ短縮出来る点です。
サイズにもよりますが、一つの部品を出力するのに、数10分から数時間です。もし、部品を加工屋さんに造ってもらうとなると、かなり拝み倒して1~2週間の時間が必要です。ここで手にした部品で、イマイチな点があったときに設計を直して、確認するためにまた同じだけ時間が掛かります。
3Dプリンタで部品を作る事を前提に設計を進めて行けば、この試作に要する時間を桁違いに短くする事が出来て、一つの設計をまとめるのに、4,5回以上の試作を重ねて検討を進めることが出来ます。しかもキャッシュアウトは極小です。
このような設計環境は、かなり画期的な事だと思います。

3Dプリンタが普及し始めて、随分時間が経過しますが、設計と試作を通した検証を低コストかつ迅速できてしまうところが最大の利点であることを遅まきながら実感しました。
メカ屋が趣味でものづくりをするには、これまでは手業のレベルで作れるモノが大きく制約されていましたが、このような機械の普及で、かなり楽しめることが出来そうです。

更に楽しむためには、作った機構を動かすためのエレキ・ソフトのスキルを獲得していなきゃと思うところです。

良い時代になりました。