中野翔太ピアノリサイタル@ふじみ野ステラ・イースト
自宅から歩いていける所に客席322席のホールが出来ました。
そのホールの開館記念事業の一つして開催された、中野翔太さんのピアノリサイタルを聴きに出かけてきました。

中野さんの演奏を生で聴くのは初めて。加えて、このホール自慢のイタリア・FAZIOLI社製ピアノ(F278)の音色も初体験で、期待が高まります。結果は、その期待を大きく上回る大満足のコンサートでした。
演奏されたプログラムは以下の通り。
モーツァルト:幻想曲 ニ短調 K.397
シューマン/リスト編:献呈
ラヴェル:水の戯れ
サティ:3つのグノシエンヌ
挾間美帆:ブルー・ペガサス(委嘱作品/2024)
ーー休憩ーー
山根明季子:ビートの網目 〜ピアノと電子音のための〜
坂本龍一:Bolerish
坂本龍一:A Flower Is Not a Flower
坂本龍一:戦場のメリークリスマス
ガーシュウィン:ラプソディ・イン・ブルー
ーーアンコールーー
坂本龍一:アクア
曲間で中野さんがマイクを取り、作品についてコンパクトに解説してくださいました。これが秀逸。現代曲の入口をやさしく開いてくれる説明で、休憩後の《ビートの網目》は解説がなければ「よくわからん」で終わっていたかもしれません。
この曲では、スピーカーから流れるリズムマシンのビートに対して、ピアノがわずかに異なるリズムで呼応します。無機質な電子音があるからこそ、人が弾くピアノの音に体温が浮かび上がる――そんな不思議な感覚があり、たいへん興味深い体験でした。
また、中野さんの技量ゆえかピアノの特性ゆえか、高音域の切れ味が抜群。ピッコロを思わせるほど粒立ちの良い音が連なり、耳が嬉しくなる瞬間が何度もありました。プロ相手に僭越ですが、めちゃくちゃ上手い。
ホールは音響の良さを“売り”にしていますが、その言葉に偽りなし。音がすっと立ち上がり、過度に残響が尾を引かない。独奏楽器、とりわけヴァイオリンやチェロをこの規模でじっくり聴いてみたくなる、そんな秀逸な空間でした。
もちろん、ホールを作っただけでは街の文化は花開きません。良い公演を継続して企画し、聴いた市民がそれぞれの暮らしへ芸術体験を持ち帰る――その循環が育つことを願っています。
歩いて行けるところに、こんなホールができた幸運に感謝しつつ。これからも存分に楽しませていただきます。
教養としての建築
先日、かんき出版から出ている『教養としての建築』(バッコ博士著)を読みました(聴きました)。
タイトルだけ見ると、歴史的な建築様式や著名な建築家の作品を紹介する本のように思えますが、実際にはもっと根本的で実際的なテーマを扱っています。
それは「建物が最低限備えるべき強さ」です。
私自身、実家が工務店を営んでいたことや、昨年自宅を新築したこと、そして前職で建築関係の方々と交流があったことから、この分野にはもともと関心がありました。だからこそ「教養としての建築」というタイトルが気になり、聴いてみました。
読んでみて印象的だったのは、一般向けの建築の本ではデザインや意匠に関する話が多いのに対して、本書は徹底して「強さ」にフォーカスしていることです。建物が壊れないこと、安全に使えることこそが大前提。その考え方は、私の専門である機械設計とも共通していて、とても理解しやすいものでした。
また、建築は一棟ごとの個別設計・施工であり、工業製品のように試作品を作って改良を重ねるプロセスを踏めない点も改めて納得しました。だからこそ、建築では安全率を大きめに見積もり、実使用でのリスクを可能な限り減らしている。ものづくりの合理性として、強く共感できる部分でした。
本書の中では、伊東豊雄氏設計の「TOD'Sビル」や「ミキモト銀座ビル」など、必要不可欠な構造体をデザインに組み込んだ事例が紹介されていました。建物の機能性能と美しさを融合させる手法に、素人ながら「これは上手い」と感じていましたので、納得感がありました。工業製品でも同じで、機能と意匠は対立するものではなく、融合してこそ人が「美しい」と感じるのだと思います。逆に、装飾のためだけに部材を貼り付けたような建築には、どうしても違和感を覚えます。
住宅に関して言えば、家は一世帯にとって最大級の投資です。建物が機能しなくなることは家計の破綻に直結しかねない。故に、住宅において「強さ」を確保することはとりわけ重要だと思います。そしてこれは住宅だけでなく、公共建築にも言えることだと思います。有名建築家の作品だからという理由で建てられた建物の中には、短期間で実使用に耐えなくなった例もあります。公金を投じて建てる共有財産だからこそ、「美しさ」よりもまず「強さ」を優先すべきではないかと考えます。
結局のところ、建築も他の工業製品と同じです。まずは必要な強度・耐久性を確保する。その上で、人々の活動がより豊かで文化的になるような美しさを備えることが大切だと思います。
本書はそのことをわかりやすく教えてくれる一冊でした。建築に詳しくない人でも読みやすく、読んだ後には街の建物を見る目が変わると思います。家を建てようとしている人はもちろん、ものづくりに携わる技術者や、公共建築を扱う立場にある人にこそおすすめしたい本でした。
ホームページづくり—羞恥心を乗り越えて
8月の中旬から、突然に自分の会社のホームページを作り始めました。
まだ、しぶとく会社は存在していたんです。
それまではネット上に「nunon」という会社の存在はほぼゼロ。検索しても何も出てこない状態でした。別に隠していたわけではないのですが、「まぁ、なくても困らないか」と思っていたのです。
心持ちの変化
前の会社を売却してからは、基本的には好きなことをしてのリタイア暮らしを過ごしていました。途中、急に家を建てることになり、これには2年間ほど費やしましたが。
時々は昔からの知り合いに頼まれることがあれば対応し、それ以外は趣味や興味のままに過ごす。5年間ほどそんな生活をしていました。これはこれで十分楽しいです。これからも続けたいとは思います。
ただ、心身ともにまだ現役として動けるうちに、ずっとフラフラ暮らしているのも世間様に悪いかな?と思いはじめました。気が小さいんです。お天道様に見られている気がして・・・・
世の中は人手不足の声ばかりですし、自分のような機械設計屋でも多少は役に立てるのではないか。突然そう思い始めた夏でした。
なぜ新規顧客に向けて?
過去の人脈に頼るのは契約上グレーなので、まともにビジネスをしようと思ったら新しいお客さんと出会うしかありません。
今の世ではまず初めのアクションとしては「ホームページを作る」ことでしょう。出かけなくても出来るし。
入口を用意しておけば、偶然でも新しい縁がつながるかもしれない。そう思ってめっちゃ重い腰を上げました。
生成AIとの壁打ち、そしてチューニング
とはいえ、いきなりホームページを作ろうとしても、文章や構成に悩みます。
文章、苦手なんですね。あと、宣伝文句。恥ずかしくて・・・・・
そこで今回かなり頼ったのがChatGPT。とにかく壁打ち相手としては優秀で、文章案もバンバン出してくれるので助かりました。
ただ、正直なところ、最初に出てきた案は自分をずいぶん“盛った”表現が多くて、小っ恥ずかしいものもありました。
そこは「いやいや、それは勘違いした痛い奴だろ・・・・」と何度も指示を出し直して、ようやくギリギリ羞恥心を感じなくてもいられるレベルに落ち着いた次第です。
AIはとにかく無限に案を出してくれるので便利なのですが、大事なのは自分自身が「どこへ向かいたいのか」をはっきり認識していること。そこがボケると、いくらでも“盛られた”表現や勝手な解釈が重なって、気がついたらどこかで破綻してしまいがちだと感じました。ホームページのようにページ全体で一貫性が必要なものでは特に、その危うさを感じました。
ホームページづくりを通じて気づいたこと
作業を進める中で、「ものづくり」「会社づくり」「ことづくり」という自分の活動の柱が改めて整理されました。これ、何となく思っていたことですが、何度も壁打ちをしていく中で思いついたキーワードで、これを軸に事業領域(なんて程じゃ無いけど)を決めて文章を埋めていきました。
また、文章を考えたり写真を選んだりするうちに、「自分は何を伝えたいのか」を改めて問い直す機会にもなりました。
今のところアクセスがあるわけではありませんが、ネット上に存在しなかった会社が、ひとまず形を持てたこと自体に意味があるかなと思っています。

初めての登山

一之宮巡りを始めた際にここを知って、体力が必要だから早めに行かなければならないなぁ~と思っていてここ数年機会を探っていたのですが、ようやく参拝に上がれました。
こちらのお社、標高3,003mにあるんです。
登山などとは全く縁の無い素人の初老のおっさんにはハードルが高いです。自他供に私の体力面には信用が無いので、嫁からも「一人で行くのはやめてくれ」と言われていて、ツアーで行く事にしました。
いろいろ探してみたところ、クラブツーリズムで雄山神社を巡るツアーがあったのでこちらに参加させてもらいました。このツアーでは麓にある雄山神社の別宮(前立社壇、祈願殿)の2社も併せて巡ってくれるツアーで、一之宮巡りを主目的とする人には最適な物でした。
現地に行って知ったのですが、このツアーでは添乗員さんの他に、登山ガイドの方が2人もついてくれる手厚いもので、この方々のサポートが素晴らしく、素人でも何とか登頂して無事に戻ってこられました。
宿泊したの立山室堂山荘でここの標高が2,452mで、山頂までは551m登る行程でした。
下から見上げると、「行けるのか?」と思う高さ感です。

左側のちょっと雲に隠れそうなところが山頂です。
一般的な行程では、ここから2時間程度で登れるそうですが、私たちは2時間半くらい欠けて登っていきました。歩くペースがゆっくりなのと、細かく小休止を入れてくれるところが絶妙でした。スマートウォッチで心拍数をモニターしながら歩いていたのですが、心拍数が130を超えてくるあたりで、小休止が入り、心拍数が100を切るくらいになると再スタートする感じです。
過負荷を長時間かけ続けると筋肉の疲れが蓄積されていき、下山時の体力が確保出来なくなるらしいので、安全に登って降りてくる全体の行程を考えてのリソース配分だそうです。
ここに、登山ガイドさんのプロフェッショナルな腕前を見た気がします。登山ルートを熟知して、歩いている私たちの能力をモニタリングしながら、時間配分を考えているそうです。これは、お金を払って相手して頂く価値は大いにあると思った次第です。
仕事でも遊びでも何でも、先達に習うのは安全性を高めつつ、習熟に至るまでの時間を節約出来て、良いものだなと再認識しました。
できる事と教えられる事は全くの別次元のスキルで、私自身が教える事がめっちゃ苦手なので、感心することしきりでした。
こうして、プロの手助けを得て、初めて登山らしい登山をしてみて、とても楽しく感じる時間でした。山の中で3分も歩くと見える景色の印象が全く異なって感じられることがとても新鮮で楽しいもので、これは登山できるだけの体力と技術を身につけたいとの欲が湧いてきました。
クラブツーリズムでは登山の超初心者向けのツアーが、カリキュラム的に用意されているみたいですので、旅をするというよりは、何かの習い事をするみたいな心持ちで極力参加していこうと思います。
新しい楽しみを見つけられて、とても有意義な経験となりました。
人前でしゃべってきました
20年以上も前からお世話になっている会社さんから頼まれて、若手の技術者対象に何か話をして欲しいとのお題をいただき、しゃべて来ました。
最初は私の本業である機械設計の事について話そうかな、とも思ったのですが、機械設計のネタだとどうしても特定の製品に対しての具体的な話になりがちで、その製品について不案内な方には興味を持ってもらいにくいかなと思って諦めました。
そこで汎用性のありそうなネタとして、技術屋向けのキャリアの話にしました。

いくつもの会社にお世話になりつつ、最後には誰とも上手くやって行けそうになく感じて起業しちゃったりした経験の中から体得してきた考え方みたいなものです。
基本的には、「好きで得意な事」を本業として、その本業に実力をある程度固めた後は、周辺領域の仕事も出来るようにしていき、技術屋としての市場価値と、中長期にわたる生存確率を上げていきましょうよ、ってな話です。
転職を繰り返し、挙げ句の果てに起業した身としてこれらの行動のリスクは承知しているつもりなので、この辺は慎重の上に慎重を期してね、と話しました。
経営者をやっていた時分には今回しゃべったような内容を、折りにつけ社員の方々には伝えていたのですが、あんまり理解を得られた実感はなかったです。
そんなネタなので、今回、話を聞いて下さった方々に伝わり、理解を得られているのかは甚だ疑問です。
この会の後に、この件を依頼して下った社長さんと呑んできましたが、やっぱり社員を雇用しての経営の仕事はしんどいなぁと記憶がまざまざと蘇ってきました。
世の中に付加価値を作り提供していく「仕事」としては、企業に雇用されている従業員も、その企業を経営している経営者も目的は同じで、その役割が違うだけなのですが、そこを理解してもらうのはなかなか難しいようです。
私自身も従業員として働いていた時代はあるのですが、その当時にどのように考えていたのかは、正確には思い出せません。今ではバイアスがかかってしまっている可能性があるのであまり偉そうな事は言えませんね。
何事も経験は大切な事なので、こうした機会を戴けたことや世の中からお声掛けを頂けることはありがたい限りです。
正直なところ、話すネタを考えまとめる作業はかなり面倒ではありましたが・・・・
使い勝手の改善
各種住宅設備はそのメーカーさんがデザインや使い勝手を考えて智慧を絞って作っているものと思います。私もメーカーで製品の設計をしていた時には、ユーザーを少しびっくりさせた上で喜んでもらえるような機構の設計に血道を上げていました。
(私の事を知っている方は信じないかも)こんな私でも基本的には性善説のスタンスで他人様の仕事を見ています。ですので、メーカーが作った製品に手を加えるのはあまり好みません。設計者としての私が、自分が設計した製品を改造して使い勝手が改善していたりしたら悲しくなってしまうので・・・・・自分がやられて嫌なことはしたくないです。
でも、キッチンの水栓廻りに関しては、私も薄々不満があったのですが、メインユーザーの嫁から是正依頼が来たのでちょっと部品を作りました。

一つ目は、水栓のノブに取り付けた部品。
純正の状態のときに、濡れた手でノブを操作すると、シンクの上側にしずくが溜まり、掃除の手間が増えるとのことで、ノブの先にキャップ上の部品を作り、シンクの上で操作できるようにしました。そのうち汚れてくる事が容易に想像出来るので、接着材などを使わずに丁度良い塩梅でノブに圧入出来る寸法で作ってみました。
二つ目は、水栓の根元に見えている部品です。これはシンクからの水跳ねがシンク上の水平部分に飛ばないように取るつけるビニールのカバーを止めるための部品です。ウチのキッチンはこの左側に除菌水が出てくる水栓がもう一つあるので、そちらにも同じ様な部品をつけて、この2点でカバー用のビニールを止めています。ちなみにこのビニールはクリアファイルを切り出したものです。
この2つの部品で、シンク周りのストレスが随分と減ったとのことで嫁の機嫌は良いです。
それにしても、このキッチンのデザインはシンプルで掃除もしやすくて概ね良い設計だとは思いますが、もう一歩進んで、飛散は仕方無いとしても、水栓を操作するときに発生する水滴は、シンク内に落ちる様な設計にしてくれていたら、感動ものだったのですが、そこら辺はあまり考慮されなかったのかな?
他に家中のあちこちに同じ様な3Dプリンタで作った部品を使っていて、QOLの向上に貢献してくれています。また、この路線のネタで書きます。
石田組@所沢MUSE

毎月送られてくるチラシのインパクトに釣られて聴きに行って来ました。
失礼ながらこのチラシを拝見するまで石田組のことは全然知らなかったのですが、生で聴けて良かったです。
石田泰尚氏が集めたメンバーで構成されている弦楽団ですが、素人感想ながらとてもまとまりのある演奏だったように思います。
プログラムは以下の通りでした。
ラヴェル(松岡あさひ編曲):亡き王女のためのパヴァーヌ
ラター:弦楽のための組曲
ホルスト:セントポール組曲op.29-2
*****休憩*****
バルトーク(ウィルナー編曲):ルーマニア民俗舞曲
~メンバー紹介~
ピアソラ(松岡あさひ編曲):アディオス・ノニーノ
ピアソラ(近藤和明編曲):リベルタンゴ
レッド・ツェッペリン(松岡あさひ編曲):天国への階段
レッド・ツェッペリン(近藤和明編曲):移民の歌
ディープ・パープル(近藤和明編曲):紫の炎
~アンコール~
水野良樹:ありがとう
ビゼー:ファランドール
オアシス:ホァットエヴァー
耳なじみのある曲、ない曲いろいろでしたが、いずれもこの楽団用に編曲が為されているのでしょうか、元々このような曲として作られたのではないかと感じられる完成度でした。
このメンバーでどれくらいの時間合わせているのかは想像出来ませんが、どうやって間合いを合わせているのだろうか?と不思議に思えるほど、各奏者のタイミングと音量が絶妙にバランスしていて心地良かったです。やっぱり生で演奏を聴く贅沢さですね。
余談ながら、埼玉に住み始めてからこの30年弱の間、音楽を聴きに行くのは9割方所沢MUSEです。音も良いし、何より近いから。
大昔に同じ演者のコンサートを所沢MUSEと藝大のホールと立て続けに聴きに行ったことがあって、所沢MUSEの方は全然良く聞こえた記憶があり、音の良いホールなんだろうなとは思っていました。
今日の演目の中で観客が手拍子をして、楽器の演奏が徐々にフェードアウトしていって手拍子だけになる時間がありました。この時に観客の手拍子が一体に聞こえつつ、その残響音がきれいに消えていくのを感じられて、やっぱりこのホールの音響は最高だなと思った次第です。
石田組が所沢MUSEに来てくれたのはこれが初めてですが、是非ともまた来ていただきたいなと心底願っています。
あ~楽しかった♪